近年、自家用電気工作物の事故等による波及事故の約4割が高圧ケーブルによるものです。高圧ケーブルとは、一言で言いますと電力会社との責任分界点から、キュービクルまでを結んだケーブル(電線)のことです。高圧交流負荷開閉器(PAS)や地中線用負荷開閉器(UGS)以降のケーブルが高圧ケーブルです。高圧ケーブルは、主に高圧用のCVケーブルのことを指します。CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)は、送電や配線等幅広くに使用されているケーブルです。タイプとして2種類あり、1975年頃から製造された内部半導電層と絶縁体の2層を一括押出成形するE-Tタイプと1983年頃から内部半導電層、外部半導電層と絶縁体の3層を一括押出成形するE-Eタイプがあります。E-Eタイプは界面から水分等が入り込む恐れが無く、水への耐久性があります。
主に構内第一柱のPASやUGSからキュービクルまで使用されるCVケーブルは、耐候性が強いため屋外の露出配線にも適しています。しかし水に弱いという欠点がありました。現在製造されているCVケーブルは、E-Eタイプのもので水への耐久性はありますが、1980年以前の製品は水に弱く、水トリーと呼ばれる劣化現象により、高圧ケーブルの波及事故も多発しています。水トリーとはCVケーブルの絶縁層内に浸入した水分により、水分と電界の関係で小さな亀裂が発生し樹枝(Tree)状に成った現象です。1980年以前の高圧ケーブルを使用している場合は、定期的に絶縁抵抗測定をおこない、早急に高圧ケーブルの更新をお願いします。
高圧ケーブルの耐用年数を知る!
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使用状態や敷設環境によって大きく変化しますが、概ね以下の通りです。
高圧ケーブルの劣化要因
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高圧ケーブルの耐用年数を短くする要因としては、次のようなものがあります。
- 1.電気的要因(過電圧や過電流など)
- 2.ケーブル内部への浸水(水トリーによる電気的劣化の発生)
- 3.機械的要因(衝撃、圧縮、屈折、引張、振動など)
- 4.熱的要因(低温、高温による物性低下や水トリーによる電気的劣化)
- 5.科学的要因(油、薬品による物性低下や化学トリーによる電気的劣化)
- 6.紫外線、オゾン層や塩分付着(物性低下)
- 7.鼠や白蟻による食害
- 8.カビや微生物による劣化
- 9.施工不良(端末処理、接地処理、外傷など)
また、上記の組み合わせによる場合は、さらに劣化が促進することが考えられます。
高圧ケーブル事故防止対策
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高圧ケーブルは、外気や水中にさらされる事が多い為、厳しい環境下の敷設が大半です。
また、外観では内部を検査する事が難しい為、定期的にケーブル診断を実施して把握される事をお勧めし、更新のときは
耐水トリー性に優れたE-Eケーブルの使用を推奨致します。
6600V トリプレックス形架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(3層同時押出)6600V CVT(EE)
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絶縁体:架橋ポリエチレン
遮へい:軟銅テープ
シース:ビニル(黒色)- 架橋方式は、乾式架橋方式となります。
- 3層同時押出ケーブルは内部半導電層、絶縁体、外部半導電層の3層を同時に押し出した構造のもので、水トリ-対策上信頼性の高いケーブルです。
- 電技解釈第120条(旧134条)で規定される「自消性のある難燃性」の要求を満足します。
(JIS規格60度傾斜燃焼試験に合格)。
20年以上使用した高圧ケーブルは、経年劣化による事故が
懸念されます。早急に更新をお願いします。