令和2年12月1日に関東東北産業保安監督部のホームページに「令和元年度関東東北産業保安監督部管内自家用電気工作物の電気事故について」の更新が掲載されました。令和元年度の電気事故総件数は129件で、前年度に比べ12件増となっています。改めて電気に対する安全意識を高めて、電気事故の未然防止に留意いただきますようお願い致します。
令和元年度関東東北産業保安監督部管内自家用電気工作物の電気事故について
- 1.はじめに
- 令和元年度の関東東北産業保安監督部管内(関東1都6県及び山梨県並びに静岡県の富士川以東)において発生した電気事故について、電気関係報告規則第3条の規定に基づき、自家用電気工作物の設置者から提出された電気事故報告をもとに、その概要を以下のとおり取りまとめました。
- 2.電気事故報告件数の推移
- 令和元年度の電気事故総件数は129件で、前年度に比べ12件増となっています。
- 3.波及事故
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波及事故は、66件報告されました。保守不備による事故が最も多く65%、次いで故意・過失が24%、他物接触が11%の割合となりました。
- (1)保守不備
- 保守不備は、巡視、点検、手入れ等の保守の不完全によるもの(保守不完全)や、制作、施工及び保守に特に欠陥がなかったにもかかわらず、電気工作物の材質、機構等に劣化を生じたもの(自然劣化)等を指し、令和元年度は43件発生しています。
- (2)故意・過失
- 故意・過失は、作業者(自社又は自社の工事請負者の命を受けて作業に従事している者)の過失によるもの等を指し、令和元年度は16件発生しています。
- (3)他物接触
- 他物接触は、ねこ、ねずみ、へび、又は鳥類等の接触、営巣等によるもの(鳥獣接触)等を指し、令和元年度は7件発生しています。
- 4.感電又はアーク等による死傷事故
- 感電・アーク等による死傷事故件数は、令和元年度は10件の報告がありました。そのうち負傷事故が10件で、死亡に至った事例はありませんでした。
事例としては、不用意に充電部に近付いたことで感電したケースや、予定外作業で充電中のキュービクル内に入り込み感電したケース等がありました。 - 5.主要電気工作物の破損事故等
- 令和元年度は51件発生しています。本事故における報告は、発電設備における事故が48件で、需要設備における事故が3件でした。なお、主要電気工作物とは、発電設備においては出力50kW 以上の太陽電池発電所など、需要設備においては使用電圧1万ボルト以上の受電用遮断器や、5万ボルト以上のケーブルなどが該当します。
- 6.電気火災事故
- 電気火災事故は、電気工作物の破損等が原因となり出火した火災で他の工作物(例:建造物など)が半焼以上した場合において報告するものです。令和元年度は2件発生しています。
- 7.おわりに(事故の防止対策として)
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令和元年度は平成30年度と比較し、事故件数は12件増加し、感電死亡事故は0件でしたが、感電負傷事故が10件発生しています。感電・アーク等による事故防止対策については、以下6項目について確認しつつ、電気主任技術者の監督・指導の下で徹底した安全確保に努めていただくようお願いします。
- ①点検や工事のための停電範囲・時間は十分か。
- ・充電部近接作業が極力生じないよう停電範囲・時間を確保した上での作業計画・実施
- ②設備側の安全対策は万全か。
- ・作業者が触れるおそれのある充電部の防護対策(アクリル板カバー等) ・充電範囲を示す作業区域図や注意標識等の掲示
- ③作業者側の安全対策は万全か。
- ・充電部近接作業を伴う場合、絶縁用保護具の着用 ・作業前の確実な検電の実施
- ④設備管理、作業管理は万全か。
- ・電気取扱者以外の者が不用意に電気室に立ち入らないよう鍵管理の徹底 ・充電部近接作業の単独作業や予定外作業等の禁止
- ⑤マニュアル類は万全か。
- ・分かりやすい作業マニュアル・手順書・チェックリスト等の準備
- ⑥教育訓練により安全意識が浸透しているか。
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・絶縁用保護具着用・検電実施・予定外作業禁止など、作業安全への理解
・作業関係者へのマニュアル類の周知や、訓練による理解度の確認波及事故については、近隣事業者等より停電の影響により生じたとされる多大な損害賠償請求がなされるケースも発生している様ですので、設置者の皆様には、以下の事故防止対策を参考に、電気主任技術者と相談の上で計画的な設備更新をお願いします。- ①地絡継電装置付き高圧交流負荷開閉器(GR付PAS、UGS)の設置
- ②高経年高圧ケーブルの更新の際、「E-Eタイプ」ケーブルの選定
- ③受変電設備への小動物侵入防止対策や風雨・風雪浸入防止対策
最後に、関東東北産業保安監督部のホームページにおいて毎月の自家用電気工作物の事故速報値や、諸手続きに関する様式、関係法令の改正等の情報を発信しています。保安教育や設置者への情報提供など、ご活用いただければ幸いです。
(関東東北産業保安監督部ホームページ)http://www.safety-kanto.meti.go.jp/
関東東北産業保安監督部のホームページより